私は昔、旅行で訪れた奄美大島で、鰹の一本釣り漁のバイトをしたことがある。毎日、10名弱の漁船に乗り東シナ海の360°水平線の海まで漁に出る。この時、私は360°水平線と言う広大なスペースの中で一人になってみたいと言う欲望にかられた。人類は陸上生物として進化を続けてきたと考える時、360°水平線の海の上という空間は、人類にとってのアンティポートではないだろうか?また、日本という島国は海を渡ってきた人々によって作られていると考える時、日本人と言うアイデンティティを確立させたのは360°水平線の海と言う特異な環境なのではないだろうか?上記の事を考えるなかで、三重県五カ所湾という町に出会った。 本作「suiheisen no ue no ie」では、旅の記録「水平線に消えて行く海の上の家」(プロジェクター)と「水平線の上の家より」(テレビ)の二つの映像を使い映像インスタレーションを行なった。